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ライザスはベッドに手をついて、まるで味わうようにじっくりとリリアの顔を見つめた。
これほど真剣に迫られてしまったら、本気にしてしまう。
まさに夫婦の契りを始めようと言わんばかりの空気である。
リリアは羞恥と不安と恐れと期待で猛烈に顔が熱くなった。
鼓動が高鳴り、体が熱を帯びてくる。
「わかりました。でも、私はまだ心の準備ができておりません。ですから……」
どうせ逃れられないのはわかっている。
しかし、急なことなのでとりあえず提案をしてみることにした。
「まずは添い寝からいかがでしょう?」
はたとお互いに見つめ合ったまま静止した。
少しのあいだ沈黙があり、ライザスが片眉を上げて明らかに不機嫌そうに口をへの字にする。
「それは俺にとってかなり酷な話ではないか?」
リリアは笑顔のまま硬直し、ですよねーっと胸中で叫んだ。
その気満々で妻の寝室を訪れたのに拒絶されるとか夫にとってどれだけ残酷なことだろう。
これはもう捨てられるかもしれないとリリアは危惧した。
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