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ところがライザスは怒ることも強行することもなく、静かに離れてくれた。
これは意外だ。
リリアは驚き、体を起こす。
「旦那さま……?」
「悪かった。たしかにあなたの言う通りだ。衝動的に行動しすぎてしまった。少し落ち着こう」
ライザスは髪をくしゃくしゃとかきながら赤面し、顔を背けた。
その仕草がなんだか可愛らしい。
(本当に少年みたいなお方なのね)
リリアはそっとライザスの手を握った。
「もう遅いのでお休みになりましょう。旦那さまは遠征に行かれる身ですから、しっかり休養しておかなければなりませんわ」
ライザスは頬を赤らめたままじっとリリアを見つめる。
いつも冷たい目線しかくれなかった彼の素直でまっすぐな表情に、リリアの胸がぎゅっと締めつけられる。
ふたりはベッドに並んで横たわった。
リリアにとってこのベッドは広すぎるので、もうひとりとなりにいるくらいがちょうどいい。
妙な静寂が漂った。
少しばかり肩が触れ合っているのでリリアはドキドキしていた。
(こんなの眠れるわけがないわ)
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