1020人が本棚に入れています
本棚に追加
昨夜のことを思い出して、急激に顔が熱くなる。
苦悩するリリアを見たマリーは笑顔でさらりと言う。
「旦那さまと言い、リリアさまと言い、子どもの恋愛ですか」
「え？」
「まあ、いいんですけどね。私は楽しいので」
「ん？」
「朝食をお持ちしますね」
そう言ってマリーはさっさと出ていってしまった。
リリアは顔を洗ってタオルで拭いたあと、自分の顔を鏡で見た。
（旦那さまと顔を合わせづらいわ）
昨夜起こったことがいまだ信じられないのと、別人のようなライザスの姿に戸惑いの気持ちもある。
あまりにも近いライザスの顔を思い出すたびに恥ずかしくなって、しばらくリリアは頭を抱えて唸っていた。
だが、予想とはまるで違う展開になった。
いつも通り書庫へ向かっていると、ライザスと廊下で鉢合わせてしまったのだ。
彼は簡素な白シャツとスラックスという格好で、数人の騎士と一緒にいた。
これから剣術の訓練に行くのだろう。
リリアが挨拶をしようとしたら彼は目も合わせずにそのまま通りすぎた。
（えっ……、あれ？）
思わず振り返って声をかける。
「おはようございます、旦那さま」
するとライザスは少し顔を向けて「ああ」と返事をした。
彼はさっぱりとした口調でそう言ったきり、さっさと行ってしまった。
リリアは呆然として、しばらく動けないでいた。
（え？ 何？ 昨夜のあれは何だったの？）
最初のコメントを投稿しよう！