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妄想に囚われて顔がへなへなに緩んでいたライザスはアベールの視線に気づいて慌てて真顔になる。
「考えておこう」
そう言ってライザスは部屋を出て庭園に向かった。
子どもの話が出てくるとは予想外だった。
跡継ぎは必要だ。すでに養子を迎えるために何人か候補となる少年を騎士養成所で見つけてある。
彼らが成長したら、もっとも侯爵家にふさわしい者を迎え入れて教育をするつもりだ。
しかし――。
(自分で子どもを作るだと? 誰と!?)
考える間もなくリリアの顔が浮かんでライザスはとっさに花壇の前にしゃがみ込んだ。
雨は上がり、雲間から日の光が差してきた。
目の前の花壇には白いスミレの花が咲いており、雨粒でキラキラ輝いていた。
ライザスはぼんやりそれを見つめながら、リリアの顔を思い浮かべて顔が火照った。
そんなとき、背後から本人の声がした。
「旦那さま、どうかなさいましたか?」
どきんっとライザスの鼓動が跳ね上がった。
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