2、虐げられてきた実家を出る日

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 バシャアア――ッとリリアの頭上に水が降ってきた。  見事にリリアも書物も床も水浸しになる。  誰がやったのかわかっているので、リリアはまったく動じることはなかった。 「よかったなあ。無能のお前でも役に立って」  兄が部屋の扉を開けてリリアを嘲笑っていた。    リリアの兄は優秀な魔導士である。  彼の得意とするのは水魔法で、その威力は凄まじく、濁流を作り出すこともできる。  魔力の弱いリリアは一度魔法を使うと回復に時間がかかるが、兄は次々と魔法を使うことができた。  そんな兄は両親に甘やかされ、非常に気分屋であり、ささいなことでも気に入らないことがあるとこうしてリリアに八つ当たりをした。  それは、妹たちも同じ。  彼女たちは兄の背後でクスクス笑っていた。 「似合ってるわよ、お姉さま。その無様な格好が」  と妹のひとりが口角を上げて不気味な笑みを向けた。 「やだあ。お気に入りのドレスがそんなことになったら、あたし死んじゃうわ」  ともうひとりの妹がずぶ濡れのリリアを見て鼻で笑った。
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