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リリアは泣きながら逃げるように走り去り、そのあとをライザスが追いかけている。
マリーは深いため息をついた。
「もおー、ほんっとに世話の焼ける主人だこと！」
マリーは近くに走ってきたライザスの足を箒で引っかけてやった。
ライザスは水たまりにべしゃっと派手に転倒。
その音に気づいたリリアが足を止めて振り返った。
「旦那さま、大丈夫ですか？」
「ああ、ただ足を滑らせただけだ」
ライザスの足は泥まみれで、顔や上半身にも泥が跳ねて悲惨なことになっていた。
彼はマリーのほうへ目を向けてじろりと睨む。
マリーはささっと植木の背後に隠れたが、バレていることはわかっている。
だが、こうでもしないとこのふたりはどうにもならないと思ったから荒療治のつもりだ。
「遠征前に怪我をしてしまってはいけませんわ」
「平気だ。少し足を捻っただけだ」
「そのままでいてくださいね」
リリアが手をかざすと水がライザスを包み込み、泥が浮かんで消えた。
そのあと風が包み込んで彼の濡れた服を乾かした。
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