8、スキル【溺愛】が絶好調な夫の苦悩

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「便利なものだ。いつも思うが一体どんな仕組みなのだ? 無から水を出せるとは」 「自然界にある水や火や風を集めているのです。今日は雨上がりなので水はそこら中にたっぷりありますからね」 「ほう。あなたの能力は戦場で役に立ちそうだ」 「いいえ。私は一度この力を使うとしばらく回復に時間がかかりますのでたいして役立ちません」 「そうか。でも、ありがとう」  礼を言うと、リリアはにっこり微笑んだ。  ライザスは頬を赤らめながら、遠慮がちに訊ねる。 「ところで、さっきはなぜ泣いていた? 目が痛いというのは嘘だろう?」 「え、あの……少し、動揺してしまって」 「俺があなたにひどいことを言ったのか?」 「自覚がないのですか?」  呆気にとられるリリアを見て、ライザスは苦悶の表情で嘆息する。 「すまなかった。最近は少し、取り乱すことが多くて困っている。あなたに迷惑がかかるならすぐにでも俺はこの屋敷を出ていく」 「迷惑なことなどありません!」 「え?」  リリアが声を上げたので、ライザスは驚いて目を見開いた。
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