8、スキル【溺愛】が絶好調な夫の苦悩

10/11
前へ
/192ページ
次へ
「私は、もっと旦那さまとお話がしたいのです。けれど、ずっと避けられてばかりなので」 「避けているつもりはなかった。ただ、あなたを見ると平常心が保てないんだ」 「わかっています。あのスキルのせいで旦那さまが苦しめられていることを。だから私もどれほど無視をされても、冷たい言葉を投げられても、きつい目で睨まれても、耐える覚悟なのでございます」  真剣な顔でそんなことを言うリリアを見て、ライザスはぼそりと言った。 「俺、サイテーだな」 「あれ? 気づいてしまいましたか」 「すまなかった」  ライザスは深く頭を下げて謝罪した。  その態度にリリアは驚き、そしてふっと笑みを浮かべた。 「ねえ、旦那さま。たとえ偽りであっても、今はそのままの旦那さまと一緒にいたいのです。これは私のわがままですか?」 「わがままではない。決してあなたのせいではない」 「では、旦那さまのそのままの想いを私にぶつけてくださいませ」  リリアは両手を広げてにっこりと微笑む。 「もう我慢しないでください」
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1023人が本棚に入れています
本棚に追加