9、偽りの上に成り立つ夫婦の契り

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 その日の晩餐はダイニングルームではなく、ライザスの部屋だった。  余計なものが一切置かれていないシンプルな部屋にリリアは驚いた。  希少価値のある骨董品や贅沢な調度品などであふれ返っている兄の部屋とは大違いで、ライザスがいかに倹約家であるかということがわかる。  しかし自室以外の公のスペースではしっかり高価な置物もあるし、使用人への給金も高いことから、彼は決してケチなわけではない。  物欲がそれほどないのだろう。  ただ食事に関してはかなり豪勢だった。  簡素なテーブルに数々の料理が並べられる。    ホワイトソースで味つけをした白身魚のムニエル。  数種類のきのこを使ったオリーブオイルソテー。  トマトとチーズの入ったスフレオムレツ。  食用花とハーブの彩りサラダ。  かぼちゃのポタージュ。  ローストビーフのサワークリーム添え。  バゲットとクロワッサンにラズベリーのシャルロット。  相変わらず料理長の腕前は素晴らしい。  リリアは見ているだけでお腹が満たされるようだった。
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