9、偽りの上に成り立つ夫婦の契り

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「美味しいです」 「そうだろう。料理長の腕は素晴らしい」 「そのお言葉をもっと彼に伝えてあげてください。きっと喜びます」 「俺は人を褒めるのが苦手だ」 「大切なことですよ。私はあまり褒めてもらったことはありませんが、誰かにありがとうと言われたり感謝されたりするとすごく嬉しいですから」 「そうか。では次からは料理長に指摘したあと礼の言葉も忘れないようにしよう」 「そうしてくださいませ」  ふたりはゆっくり語り合いながら食事をした。  ライザスは3年前に両親を亡くしたことを話した。  親戚たちがこぞって遺産を狙って後見人になろうとしたが、ライザスは爵位を継いで当主となり、彼らに厳しく対応したそうだ。 「あいつらは金のことばかりだ。なるべく会わないようにしている」  そんなふうに語るライザスは少し寂しそうに見えた。
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