9、偽りの上に成り立つ夫婦の契り

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「今まで大切なものはなかった。万が一俺が死んだらこの家の財産を受け継ぐ者に関しては文面に残してある。俺は独り身だから身軽なものだった。あなたとの結婚も形式的なものにすぎない。今までと変わらないはずだった」  リリアは静かに「はい」と言い、続きを聞く。  ライザスはリリアにまっすぐ目を向けて力強く言い放つ。 「俺には今、自分よりも大切なものがある」 「……旦那さま」 「あなたがこの家にいるから、俺は何としても帰ってこなければならない」  リリアはたまらなく嬉しくなり、彼に笑顔を向けた。 「はい。必ずお帰りくださいませ。私は待っていますから」  ライザスは頬を赤らめながら遠慮がちにリリアに切り出す。 「俺は、無責任なことはしたくない。だが、これだけはどうしても抑えきれないんだ」 「はい」  リリアはじっとライザスから目を離さずにいる。  彼は顔を真っ赤に染めて熱のこもった声音で告げる。 「俺は今夜、あなたがほしい」
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