告白 ①

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告白 ①

 ルーカス様が言われた通り、その日のうちに僕とルーカス様の婚約は白紙に戻った。原因はルーカス様が無理矢理にサイモンから僕を奪ったことへの自責の念だということだった。  婚約破棄になった僕は、自分の意思で宮廷から出られることになったけれど、平民となったサイモンは僕を連れて帰ることはできない。でもルーカス様が特別に僕とサイモンが一緒にいることを許してくださった。  そして僕たちは帝都の城下にあるサイモンが新しく移り住んだ家に帰った。   部屋の中は必要最低限の物しか置いていない。ただお皿やカップ、スプーンとフォークなどの食器類だけは二人分ある。  僕が「どうして食器類だけ二人分あるの?」と聞くと、「いつかレオと一緒に住める時のために、これだけは二人分用意したかった」と言われ、まだ囲んだことのないサイモンと僕だけの食卓を想像して、それだけで幸せだった。  晩御飯は宮殿を出る時にもらったサンドイッチ。  もうこんなにみずみずしい野菜や、柔らかなお肉は食べられないと思うけれど、サイモンと一緒に食べられる食事はどんな高級な食事よりも、僕にとっては素晴らしい食事だと思う。  風呂に入り、一人用のベッドで体を寄せ合いながら横になる。今まで笑顔だったサイモンの顔が急に曇った。 「サイモンどうしたの?」  僕とのことを後悔してるんじゃないのかな?  不安がよぎる。 「レオ、ルーカス様とのこと、本当によかったの?」 「え?」 「だってルーカス様と結婚していたら、レオは皇后様にもなれたかもしれないのに……」  サイモンの口から、まさかそんなことを言われるとは思ってもみなかった。 「サイモン、僕、怒るよ」  ギロリとサイモンを睨む。 「僕が愛しているのはサイモンだけだって、何回言えばいいの?僕、そんなに信用ない?」 「そんな!そんなことはないけど、俺は今、平民だし、レオに釣り合うかって思うと自信がなくて……」  いつもは僕を愛することに全力を注ぎ込んでくれているサイモンが、今日は少し尻込みをしている。 「あのね、僕はサイモンが伯爵だから好きだったんじゃないよ。サイモンはどんな時でも僕をちゃんと見てくれて、知ってくれて、守ってくれる。いつもは頼り甲斐があって凛々しいけれど、時々見せてくれる甘えたなところも大好きなんだ。僕だけに見せてくれるサイモンが本当に愛おしいんだ」  自信なさげに僕の話をじっと聞くサイモンの胸に、顔を埋める。 「僕が愛しているのはサイモンだけで、今までもこれからも、それは変わらない。いくらサイモンが僕のことを嫌いになっても、僕はサイモンを愛し続けるよ」
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