告白 ②

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告白 ②

 そうだ。  どんなことがあっても、脅されたとしても、僕の心の中にいるのはサイモンだけ。  まだ僕が弱虫だった頃から僕をちゃんと見てくれたサイモンだけが、僕のたった一人の愛する人。 「愛してる」  そういうと、僕を抱きしめるサイモンの腕に力が入る。 「俺はね、ずっとずっとレオを、レオだけを見て来た。どんなに酷いことをされても、誰にも見向きもされなくても、人のことを思いやれるレオが大好きだった。でもレオはカトラレル家の次期城主で俺はオリバー家の次期城主。次期城主同士は一緒にはなれない。だから俺はレオが素晴らしい人と結ばれるまで見守ろうと思っていたんだ。だけどそれがレオもミカも傷つけていたんだね」 「……」 「どうしてレオが俺に嘘をついたのか?ルーカス様の妃になると決めたのか、エマから聞いたよ。俺達のことを思ってのことだったのに、苛立ちをレオにぶつけて怒鳴って悪かった。レオは俺が罰せられるとオリバー家が取り潰されると思ったんだろ?だったら俺が爵位を捨てれば、レオを苦しめている鎖が取れると思ってなんだ。俺にとってレオが何より大切で愛おしい。レオだけを思って愛している。だから……」  そこで一度サイモンは話を止めてから、ゆっくりと息を吸い込み、 「レオナルド、俺は平民で何も持っていないけど、レオのために、この命を捧げるよ。だからお願いだ。俺ともう一度結婚してください」  僕の瞳をしっかりと見つめ言った。  もうサイモンと一緒にいられるなんて、考えもしなかった。  あんな嘘ばかりついた僕を許してくれるなんて思わなかった。  こんな卑怯な僕を選んでくれるとは思わなかった。  僕はすぐにでも「はい」と返事をしたかったけれど、サイモンにどうしても言わないといけないことがある。 「あのねサイモン、僕まだ大切なことをサイモンにいえていない」 「大切なこと?」 「僕、サイモンとの赤ちゃん妊娠していて、流産してしまってたんだ」 「!!」  声もなくサイモンは驚く。 「流産するまで妊娠していたことに気がつかなくて、僕、赤ちゃん守れなかった……」  何もしてやれなかったことが申し訳ない、会えなかったことが悲しい、もっと早くに知っていれば助けられた命だったかもしれない。  後悔しかなかった。 「レオ、僕達の赤ちゃんを宿してくれて、ありがとう。守っていてくれて、ありがとう」 「僕、守れなかった。守れなかったんだよ!」  赤ちゃんのことを考えると涙が溢れる。  きっと生まれて来たかっただろう。外の世界を見せてあげたかった。  僕は赤ちゃんのお母さんなのに! 「赤ちゃんはレオのお腹の中で守られながら、少しずつ大きくなって幸せだったと思うよ。生まれてくることはできなかったけど、俺とレオの間に赤ちゃんがいたことは、紛れもない真実だ。俺達が赤ちゃんのことを大切に思い続ければ、赤ちゃんは俺達の中で生き続ける。な、だから大丈夫。レオは赤ちゃんを守ってくれていたんだ」 「僕、ちゃんと守れてた?」 「ああ、ちゃんと」 「サイモンとの赤ちゃんは、僕に気づかれず、ずっと一人で寂しくなかった?」 「レオのお腹で、レオと一緒に過ごせて幸せだったと思うよ」 「サイモンに赤ちゃんのこと言ってなくて、僕に失望した?」 「するものか。辛い話なのにこうしてちゃんと話してくれた。それ以上、何が必要だって言うんだ?」 「……」 「愛してるよレオ。俺と番になって」  どんな僕も受け止めてくれるサイモン。  僕はサイモンが辛い時、一番そばにいて一緒に乗り越えていきたい。  辛い時も楽しい時も、喧嘩しても仲直りして、僕はサイモンとそんな日々を過ごしていきたい。 「はい。僕もサイモンと番になりたい」  二人静かに抱き合った。
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