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たぶん無免許の正太郎父さんがしっかりと飛ばして遠くの科学館までわざわざ連れて行ってくれた。思いっきり僕の家にある車だった。
「これって免許あるの?」
「問題ない三ミリ浮いてる」
ドラえもんかよと突っ込もうとしたけれど、伝わらなさそうだと判断して保留にしておいた。ドリフトを三回くらったので驚いた。のでまた免許があるのか不安になって、
「ほんとに車の免許取ったのか!?」
「人の子よこれは車ではない宇宙車だ」
「何が違うんだ」
「燃費だ」
広々と近くに牧場があって、そこの隣にポツンと建っている。風が吹くときにはそろいもそろって草どうしが動いた。生々しい牛の匂いがする。田舎の方だけど、プラネタリウムは素晴らしい出来らしい。
「UFOで牛でも持って帰りたいわ」
七生母さんがずっとその日はそれをつぶやいてばかりだった。
牧場とはうってかわった鉄のプラネタリウムの中へ僕らは入った。
火星がどうとか、衛星だか惑星だかは文系の僕には全く理解ができなかった。天文学なんて全く知らないし、中学の時は高校入試問題の月の単元でひたすらに苦労したものだった。たぶん僕に初めての彼女ができたとして、ここに連れてこられたのだったら僕は寝るだろう。
「あれは、絵おいジェれジョイえ星と呼ばれるものですね」
僕にはよく解説の人が何を言っているのか聞き取れなかったが、その時に他の四人があっと息を飲んで、ただぼろぼろと触覚から緑色の液体を出していたのがわかった。遠く、遠く、具体的に光年という単位が僕にとっては概念的なものでしかないのに、この家族の前だったらそれはあまりにも具体的なものになってしまった。
「なあ、もしかして」
「そうだよ」
私語は厳禁だったので、プラネタリウム中に遼太郎とそう話したのが唯一のことだった。なんちゃら大三角形やらオリオン座みたいなやつやら、教養として何も持ち合わせていない僕が憎かった。
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