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変わらないようなことをいくつかいって、それが少し落ち着いて、若干静かになって、なんだかシリアスなことを言った方がいい雰囲気になってしまったので、その下等な惑星の生物の一人である僕の方から切り出した。
「次さ、いつ会えんの」
「地球征服したらかもしれない」
「悩ましいところ」
「悩ましいのか」
ぷはっと吹き出して、遼太郎にいくつか、いくつも加減されて肩を叩かれた。
「また来てよ」
「まさか。重要な用事でもない限りはそんなに行けない。お前だって特に用事でもない限りそんなにちょくちょく海外だの行けないだろ」
「でも僕の人間の方の父さん母さんはよく行くさ」
とでも返してよっしゃと思ったのに、「よそはよそうちはうち」と一丁前に人間のようなことを言い始めたので僕も笑った。
「遠いわけだよ、ずっとずっとね。君ら人間がぎりぎり認識できるくらいの遠さ」
「認識できるだけ御の字ってとこだよ」
「ナオミたちにも伝えとくわ、それ」
「行けるといいな、地球がずっとずっと発展して、俺らんとこ自力で来れるようになったら」
「待ってるからな、由紀夫」
「いつか行くよ」
たぶんその約束は、僕には寿命が短すぎるし、僕にそんな能力があるとは客観的に考えたらできないに決まっていたのに、この時はいつでも会えるような気がした。たぶん正太郎父さんも僕には無理だと思ってるかもしれないけど、それでも父さんたちと過ごしたのはなんやかんや結局楽しかった。
「僕らじゃまだ月とかが精一杯ってところだけどね」
「頑張れよ、宇宙人」
言い残して遼太郎は銀の円盤の方へ向かった、そう向かったと思ったところでない踵を返して、
「じゃあな、零翔」
と確実に人間の耳の位置を理解したそぶりで、ふとささやいてきたので、
「なんでも知ってんだな、お前」
と言って遼太郎を元の宇宙へ戻した。銀の円盤が見えなくなるまで、僕は円盤へとてを振り続けた。それがどれだけ無駄なことかわからなかったけれど、遠く遠くへと旅立ってからも、僕がもしあの惑星で生まれていたらどうなっていたか、これからあそこへ行ける手段はあるかなんてことを呆然と、有意義に呆然とし続けた。
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