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「実の」父親譲りの大きな本棚の前で、地べたに座って僕が主導権を握って名づけることになった。と言っても、こいつら中途半端な宇宙人は苗字、名前の概念をあまり理解しなかったからだった。
「知らん人の子、頼むからつけるが良い」
「なんでわかんないんだよ六日で全部マスターしたんだろ!?」
「それ以上言ったら誘拐するが」
「やだよ」
くそでかいため息をついて、イソギンチャクたちに名前をつけた。
「君が正太郎、君が七生、君が遼太郎で君がナオミ」
僕は零翔という文学みのない名前が大っ嫌いだったので、どうせならで文学繋がりで名前をつけた。
父親役が池波正太郎、母親役が塩野七生、弟が司馬遼太郎、妹は谷崎潤一郎の小説に出てくるナオミ。すごいメンツだ。正太郎遼太郎、七生ナオミで親子感が良い上に、最高に知的。正太郎七生遼太郎なんて全員歴史小説家という共通点まである。
僕、賢い!ニヤニヤしていたのだが、
「池波正太郎、塩野七生、俺が司馬遼太郎、谷崎潤一郎のナオミ。どうせ文学的でかっけえって思ってんだろ」
遼太郎にニヤニヤされた。
「なんでそれを」
「暇だったから全部読んどいたの、ついでに由紀夫は三島由紀夫」
「マジか」
宇宙人ってすごい。
「由紀夫か。いい名前だけど、由紀夫の場合は裏垢の名前にでもとしてそうだよな」
図星だった。
「当たりかよ、気が向いたら見てやるから」
「向かんでいいそんな気」
「なかなか賢くていい名前だと思うぜえ」
謎にフォローされた。嬉しくない。
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