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七日目。今日からゴールデンウィークは明けて学校は始まってしまう。今年はなかなかに長くおっしゃと思っていたし、周りの人なんかインスタで楽しんでいたのに、こいつらのせいで僕の休日は虚無だった。
でも、こいつらは部屋に閉じこもるのを許さない宇宙人だし、学校だってこれから行けるものだろうか。
「あのさ」
「なんだ、言ってみろ人の子よ」
唯一起きていた正太郎に学校へ行く交渉をしてみた。正太郎以外は僕の父さん母さんが寝ていたベッドで偉そうに大殿籠もっている。まあ寝るという概念も僕たちのマネにしかすぎないのかもしれないけど。
「これからさ、僕、学校ってとこ行かなきゃなんないんだ」
「ほう」
ずずずとコーヒーを飲んで、新聞に目を落としている。それがピンク色のイソギンチャク星人ということ以外は、実にうまく父親らしいことをしている。新聞の内容はたぶん理解できていない。
「学校っていうか、君ら宇宙人が僕見て学んでるみたいにさ、僕は学校ってとこ行って学んでかなきゃなんだよね」
「そうか」
「いや、あの、だから家にずっといて君らホームステイに付き合ってるなんてのはできなくなるんだよ、これから」
「いいぞ」
「え、だから、家離れなきゃいけないんだよ、その夕方か夜かに帰るけど」
「別にいいぞ。地球習慣帳の83ページに載ってたしな」
ちょっと意外だった。正太郎はまた新聞に目を落として、不景気って大変だとブツブツ言っていた。宇宙人に不景気は何も関係ないだろうとはいえ、地球人の僕の習慣を優先させる程度の感情はあるらしかった。
とにかく暴力振るわないなあと少し逆に疑ってきたが、新聞見てて、他は寝ているからラッキーだと抜け出すようにこっそり重いドアを開けた。しかし大きな音でがちゃりと開いて、
「待て」
と正太郎に引き止められたので、なんだ、やっぱり載ってないじゃないか殺すぞと言われるのかと恐ろしく思った。
「いってらっしゃい」
と言われてなんだか肩の力が抜けて、正太郎はみじんもそう思ってないのだろうけど少し気恥ずかしく思った。言われたことなんて久しぶりだったので、ずいぶん気の抜けたいってきますが口から出た。
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