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何事もなく、その後に二週間か三週間が経った。
「あのさ」
「なんだ急に」
上からピンク色の触角が降りてきた。僕が学校に行っている間に作った3段ベッドだ。家から帰ってきたら庭の杉の木が素手で倒されたそうで僕の普通のベッドが3段ベッドにまで強化されていた。
「君ら宇宙人ってさ、僕ら地球人の真似ばっかしてるだけで、本当に思った感情なんてないんじゃねえのかなあって」
「んなこたねえよ、なあナオミ」
「ナオミ感情いーっぱい!」
「ほらよこんなナオミだっていっぱい気持ちだってあるわけだぜ、父さん母さんだって由紀夫のために料理作ったり少しばかりの足しでバイトしたりしてくれてるんだからなあ」
そのことはよく知っていた。七生は毎日料理を作ってくれて、正太郎はバイトしてくれてる。
遼太郎とナオミが杉の木を切り倒して3段ベッドにしたのも、ただ寝床がなかったからじゃなくて僕が花粉症だったからだ。
「俺だってさ、由紀夫たち地球人が感情にまみれてんのが不思議なわけ。合理的合理的!ってのが美しいわけで、こっちきてから由紀夫たちに合わせてんの」
「そうか?」
「よな、ナオミ」
「よくわかんないけどそうだと思うぅ」
ナオミは横で聞いていたけれど飽きたのか3段ベッドの上で跳ねている。遼太郎が注意する。月が大きく窓に映る。
「俺だって由紀夫に感情あるかなんてわかんないから」
「そういうものか?」
「由紀夫はよおく俺らのこと宇宙人だっていうけどね、この家じゃ圧倒的多数で由紀夫の方が宇宙人なわけだ」
3段ベッドの1番下でわずかに星が遠くに見えた。ピンク色の触角が上に戻る。
「うるせえなナオミももう夜遅くなんだから、寝るんだぞ」
「僕を最終的にどうするつもりなんだ」
「ナオミの好きなわたあめにするのぉ」
「だってよ」
それでもなかなか自分の中で納得することがないままになった。ごちゃんごちゃんと電気のひもを引っ張って遼太郎が部屋の電気を消した。
「そいじゃあおやすみーナオミぃ」
「おやすみぃ遼太郎お兄ちゃーん」
腑に落ちずにナオミと遼太郎におやすみと言った。
「そうだ由紀夫、お前一応長男で俺の兄なんだからもうちょいちゃんとしっかりしろよ」
「ずっと気になってたけど誰が決めたんだよ」
「俺とナオミ」
「じゃあしっかりしない」
寝た。
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