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年下と年上
『ずっと前から、橋本さんのことを想っていました』
同級生が暮らす家を訪れて、彼が生活をしている部屋で告白。
なんて夢みたいな少女マンガシチュエーションだって思った。
『好きです』
けど、そういうのが起きてもいいのは、少女マンガの世界だけ。
現実を生きる私を喜ばせる言葉なんて、彼には知らないままでいてほしかった。
「はぁ」
空き教室で、お昼ご飯。
ほとんどの人たちは自分のクラスでご飯を食べるのに、私は毎日場所を変えてお昼を食べる場所を探している。
(同じ学年でも、みんなは年下……)
空き教室には私だけでなく、何人かの知らない生徒たちが集まって、それぞれのお昼休みを過ごしている。
そこには学年問わず、同じ教室でご飯を食べるっていう光景が広がっている。
年齢で線引きをしている自分が、馬鹿みたいに思えてくる。
(この世界には、日向で生きていく人と)
コンビニで買ってきたサンドイッチを口に運ぶ。
でも、その味を共有し合う友達は向かい側にも隣にも座っていない。
(日陰で生きていく人がいる……はずだった)
机の上には、書店で購入した七春ちゃんが表紙の雑誌が置いてある。
昼休みに読もうと思って学校へ持ってきたけれど、その雑誌を捲る手は完全に活動停止中。
(モブキャラクターみたいな私の……)
うるさすぎず、静かすぎることもない。
ちょうどいい空気感の空き教室では、私のように俯きがちの人もいる。
私とは正反対に、楽しそうにお昼休みの時間を楽しんでいる人たちもいる。
(どこを好きになってくれたんだろう……)
告白されたあとの流れが、また微妙なものだった。
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