年下と年上

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(逃げる必要はないけど……)  急いで空き教室を去ろうとした私は、飲もうとしていた薬を床に落としてしまう。  薬を拾おうとしたところを、私は泉くんに見つかってしまう。 「橋本さん」 「おはようございます……」 「橋本さん、今、お昼だよ」 「あ……仕事の癖で……」  薬を拾うことができず、私は薬を拾うことを一旦諦めて平生を装った。 「えっと……あれですよね? 同じクラスの留年してる……」  1度も喋ったことのないクラスメイトが、私の名前を思い出そうと頭を捻る。 「KUGA promotion所属の橋本冬優(はしもとふゆ)さん」 「っ、すみません! 同業者の方にめっちゃ失礼な……」  クラスメイトを助けるために、私の名前を紹介してくれた泉くんに感謝。  私の名前を思い出す時間すらもったいないと思っていたから、凄く助かった。 「同業者ってことは……」 「LRighets所属の小木下拓未(おぎしたたくみ)です」 「よろしくお願いいたします」  この高校に、3人もの現役声優がいたことに驚かされた。 「声優って、意外とメジャーな職業だったんですね」  驚いているのは私だけでなく、小木下くんも一緒になって驚いた。 「芸能活動が許可されている学校ですからね」  芸能界で仕事をすることが許可されている高校ということもあって、声優って職業だけでなく、アイドル活動をやっている人や唄やダンスを中心に活動している人。  俳優さんも見かけることがあって、芸能職をやっている高校生が特別珍しい高校というわけではない。  それでも、声優として仕事をしている3人が同時に集ったことに驚きは隠せない。
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