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「今日は教室以外の場所で、昼飯食べようみたいな話になって……」
「私はもう食べ終わったので良かったら使ってください」
足元に落ちている薬を、どうやって回収しようか。
いい案が何も浮かばないけど、場所を探している泉くんたちに席を譲らないわけにもいかない。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
コンビニで買ってきた食べ物の類を、机の上に置く小木下くん。
「飲み物買ってくるわ」
「俺も……」
「新入生じゃないんだから1人で十分」
泉くんを私の元に残して、小木下くんは飲み物を買うために空き教室を出て行った。
小木下くんの姿が見えなくなって、私は椅子に座るように泉くんを促した。
「めちゃくちゃ気まずいですよね……」
泉くんの口から、ぽろりと寂しそうな言葉が零れる。
「ね、驚きました。同じ職業の人に会えるなんて……」
「告白したあとに、橋本さんと2人きりになるとは思ってもみなくて……」
気まずいという言葉の意味を勘違いした私。
同業者が集って気まずいではなく、泉くんは告白をしたあとの気まずさを感じていたということ。
「お願いがあって……」
泉くんに告白されたんだってことを思い出す。
あのときの声と、言葉が本物だと信じたかったのかもしれない。
頼りたいと思った。
彼を、頼ってもいいのかなって甘えが生まれた。
「え?」
「とても大事なサプリメントを落としてしまって……」
「え、あ、はい!」
薬とは説明せずに、私はサプリメントを落としたと嘘を吐く。
見た目で薬かサプリメントなんて、判断できないと信じる。
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