年下と年上

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「落とした物を服用するのって思うかもしれないですけど、拾って飲まないといけないくらい大事なサプリで……」  薬のことを説明したくない。  どうかサプリメントって誤魔化しが通用しますようにと願いを込めて、泉くんに事の重大さを伝える。 「それくらい、手伝いますよ」  そもそもサプリかどうかも怪しいような私の説明を追及することなく、泉くんは快く引き受けてくれた。  泉くんが私の頼みごとを不快に思っていないことが分かると、酷く安堵する。凄く安堵じゃなくて、酷く安堵した。 「オレンジ色のカプセルで……」  2人で、机の下を一緒に覗き込む。 「橋本さんの足元に、1個転がっていますよ」 「1!?」  1錠でも足りなくなると困る。  そんな事情を抱えていることもあって、泉くんの1という言葉に過剰に反応してしまった。 「足りません?」 「あと1錠……」 「…………」  一瞬、泉くんは薬を探す手を止めた。  でも、何に引っかかりを感じたのか分からず、私は薬が転がっていた方向に視線をさ迷わせる。 「あ、泉くんのところまで転がって……」 「拾います」  薬を手にした泉くんは、拾ったカプセルを私に手渡してくれた。  心ここにあらずだった泉くんが、ようやく戻ってきてくれた感じがする。 「良かった……」  まるで宝物を見つけたときのような喜び方をしてしまって、違和感を抱かれていないか緊張が走る。  でも、何事もなかったかのように、薬に付いた埃を払い除ける。
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