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「私は友達がいないので、好きなところでお昼を食べれるのはすごく助かってます」
「あの……」
何か言い辛そうに口ごもる泉くん。
「いじめ……ですか?」
「ふふっ、違いますよ」
彼が口ごもった理由がわかったのはいいけど、まるでドラマやマンガの中のような展開を妄想されてしまったことが可笑しくて笑ってしまった。
「私、留年しているのでクラスの子と年齢が違うんです」
「噂では聞いてました」
泉くんが気にしすぎないように、軽く話を流そうと試みる。
「たまにいるらしいですよね。留学するために留年を選んだ人とか」
「かっこいいですよね」
「一時、橋本さんをアニメで見かけない時期があったので心配していたんですけど……」
泉くんは、年上の同級生の話を真面目に聞いてくれる。
「学校を休む理由があったからなんですね」
私の事情に踏み入ることなく、なんとなくの事情を察して話を進めてくれる。
その気遣いに感謝しながら、私はいつも通りを装っていく。
「事務所が違うのに、よく私が声優だって気づきましたね」
「俺、最近まで橋本さんのことが嫌いだったんです」
「…………」
嫌いという言葉を受けてショックを受けるのではなく、ただ単純に泉くんが何を話したいのか気になった。
「ははっ、いきなりなんの話をするんだって感じですよね」
泉くんも、そんなに深い話ではないですよって雰囲気を作りながら話を始める。
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