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「そんな思い出があって、どうして私のこと……」
「そんな思い出があったからです」
私に向けるのすら、もったいないと思ってしまうような泉くんの素敵な笑顔。
「今日こそは今日こそはって、意気込むたびに橋本さんに奪われて」
その笑顔を待ち望んでいるのは、泉くんのファン。
「共演するたびに橋本さんのことを目で追いかけていたら」
私に向けるのは、間違っていますよって言いたくなるのに。
「橋本さんの気遣いとか優しさとか、そういうのに気がつくようになって……」
惹かれる。
「今ではべた惚れです」
泉くんの優しい笑みに。
「橋本さんが思っている以上に、俺は橋本さんのことが好きです」
泉くんの優しい声に。
「おーい、悪い、遅くなって」
飲み物を買ってきた小木下くんが、空き教室へと戻ってきた。
「もっと遅くなっても良かったのに」
「さっきは失礼なこと言っちゃって、申し訳ございませんでした」
お茶が入ったペットボトルを小木下くんから手渡される
「おまえの分も」
「ありがと……」
「ありがとうございました!」
泉くんからの、2度目の告白。
恥ずかしさのあまり、私は泉くんの顔をほとんど見れずに空き教室から立ち去ってしまった。
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