33人が本棚に入れています
本棚に追加
「冬優ちゃん、お疲れ様っ」
「お疲れ様」
同い年の河原木七春ちゃんが、メインヒロインで出演するアニメーションの収録スタジオ。
同期の彼女とは座る席が離れているけれど、七春ちゃんは収録が終わると同時に私の元へと挨拶に来てくれた。
「またね、冬優ちゃん」
「また……」
七春ちゃんは自分を綺麗に魅せるための服を選んでいて、その選んだ洋服は七春ちゃんの可愛らしさを更に引き立てていく。
「七春、次のスタジオも一緒だったよな?」
一方の自分は、高校の制服姿。
高校生の制服は、高校生までしか着られない。
それはわかっているけど、高校生の制服姿は少し地味に思えてしまう。
毎日着こなして、見飽きるほど着慣れているからなのか、今だけ纏うことのできる制服姿に自信が持てない。
「知哉とは、本当に共演が多いよね」
共演者たちへの挨拶を済ませた七春ちゃんは、急いで次のスタジオに向かおうとする。
そこに、共演者の南さんが話しかける。
「あ、飽きたとは言わせませんからね」
「一緒に行こうって話だよ」
七春ちゃんと仲良く会話する南さん。
特別な好意があるわけではないのに、私は二人の関係を羨ましいと思ってしまう。
「冬優ちゃん、バイバイ」
私には、仲のいい共演者がいない。
私の交友関係は、今も昔も変わっていない。
それなのに、同期の女の子はものすごい勢いで交友関係を広げていく。
最初のコメントを投稿しよう!