日向と日陰

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「あの2人、隠す気ないもんなー」 「こっちからすると、やっと週刊誌が取り上げてくれたかーって感じ」  鞄からスマホを取り出し、何か連絡が来ていないか確認していたときのことだった。  ビルの中から外へと出るために、2人組の男性が会話をしながらビルの出入り口へと向かってくる声が聞こえてきた。 「もう何年くらい?」 「3年?」  私とは別スタジオで収録してた同業者たちは、ビルの外で突っ立ったままの私に気づくことなく横を通り過ぎて行こうとする。 「お疲れ様でした」  私は、同業者と気づいていた。  でも、相手は私の存在に気づいていないみたいだった。 「お疲れ様でした……」 「お疲れ様です……」  無視されると気づいてしまったから、私は先手をとって挨拶を済ませた。 「誰だっけ?」 「制服着てたから、関係ない人かと思って無視しようかと……」  全部、聞こえています。  声優という職業柄のせいなのか、小声で喋っている内容ですらも聞き取れてしまう滑舌の良さ。  声の大きさも加減できるとは思うけど、そこまで私に気を遣ってはいられないということらしい。 「…………」  スマホ画面に、人気声優河原木七春(かわらぎななは)南知哉(みなみともや)の熱愛ニュースが飛び込んでくる。  スマホ画面いっぱいに広がる七春ちゃんと南さんへの祝福コメント。
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