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(スタジオ近くのマンション……)
泉くんは従妹とシェアハウスとしているらしくて、広さが十分にあるマンションに住んでいた。
(家賃が高そう……)
私の着替えを探しに行ってくれている泉くんを待ちながら、こんなにも高級そうなマンションに住んでいる泉くんの経済力に言葉を失う。
「服が乾くまで、これを着て待っていてください」
部屋をじろじろと観察するのは失礼だとわかっていても、東京への憧れが詰め込まれたような仕様のマンションにどうしても視線を泳がせてしまう。
「アニメーターの従妹と一緒に住んでいるんですけど、あまりの忙しさにほとんど帰ってこないんです」
声優もアニメーターも安い給料で働いているというけれど、力ある人は稼ぐことができるのだということを学ばせてもらう。
「こんなに広い部屋を独占できてラッキー……って、すみません! シャワー使ってください!」
「泉さんは……」
「俺はドライヤーを先に借りますね」
教室で見かけるときと、なんら変わらない爽やかな笑顔を浮かべながら泉くんは私のことを見送ってくれた。
(こんなに優しくされるの……)
脱衣所にやって来て、急いで制服を脱ごうと手を動かす。
早く泉くんにお風呂を代わるためにも、私がお風呂を独占するわけにもいかない。
(いつ以来かな……)
シャワーを終えて、リビングに顔を覗かせる。
すると、泉くんは雨に濡れていた事なんて忘れてしまうほど、ゆったりとした時間を過ごしていたみたいだった。
「シャワーありがとうございました」
「こちらこそ、制服を大変な目に遭わせてしまって申し訳ございませんでした……」
自分の家のはずなのに、泉くんはどこか挙動不審気味。
ここは泉くんの家ではないのかって尋ねてみたくなるけど、話がややこしくなるのも泉くんを困らせるだけだと思って口を慎む。
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