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日向と日陰
(この世界には)
テストで100点を取っても、授業で描いた絵が入賞しても、両親は褒めてくれなかった。
上には上がいるんだから、ここで満足しないで努力を続けなさい。
私は、昔から終わりの見えない努力を強いられてきた。
(日向で生きていく人と)
そんな私が唯一褒められた記憶として残っているのは、小学校の先生が朗読を褒めてくれたというもの。
初めて褒められるという経験を与えてもらった私は中学三年で、声優になるための養成所へと通った。
「河原木は、本当にすごいよ!」
「土屋さんが、私のために動いてくれたおかげです」
声優を育成するための養成機関で、私は同い年の女の子と出会った。
そして私も、その女の子も一緒に、同じ声優事務所へと所属した。
「こんなにオーディションに合格しまくってたら、年末の賞レースも夢じゃないよ」
「ありがとうございます」
その女の子は、いつもマネージャーさんと笑顔を交えながら話をしていた。
私と女の子と一緒に事務所に所属した年上の人たちは、女の子のことを羨ましそうな目で見つめていた。
(この世界には日向で生きていく人と)
マネージャーの話を受けて、謙遜する女の子。
そんな様子を見つめることしかできない年上の人たちは、とても悔しそうな顔をしていた。
(日陰で生きていく人がいる)
私は、どんな顔をしていたのだろうか。
私は、同い年の女の子を祝福していましたか?
それとも年上の同期さんたちと一緒になって、女の子を憎たらしそうな目で見つめていましたか。
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