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こんな時、やかましいおじさん咳払いの1つでも、何処からか聞こえたりしてくれたら。
そんな風に考えてしまうくらいに、あまりにも静か過ぎる。
自分とカウンターの向こうにいる眼鏡の女性しかここには誰も存在していないのか。
そういう雰囲気のようなものを何となく察してしまう。
カウンターまでたどり着いたツナギはまるで告白でもするかのように、口を開いた。
「君のことが好きなんだ!俺とお付き合いして欲しい!」
「はい?」
氷のように冷たい視線を向けられた時、そんなふざけ方をしてよかったと、ツナギは心の奥からそう思った。
「すみません、間違えました」
「どんな間違え方なんですか」
「ここは一体どのような場所なんでしょう」
「何となく理解していらっしゃると思いますが………あなたは死んでしまったのです!若くして!事故か何かでね!ドーンッ!!」
欲に溺れた人間の末路。先がぶっ太く見えるくらいに突き出された人差し指がツナギの顔の真ん前まで。
ポニーテールを揺らし、カウンターに身を乗り出し、なかなかのサイズと見受けられやり胸元を押し潰しながら。
眼鏡を掛けた女性は、当初の凛とした雰囲気を崩してまで、そう言い放ったのだ。
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