今日も彼はパチンコ屋で働く

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巫女服の女性をオヤガミ様と呼んだのは、眼鏡の女性である。 当のオヤガミ様とやら。そう訊ねられた瞬間。今度はその場で飛び上がりそうな勢いでまた慌てふためく。 「そうじゃ、そうじゃ!お主達、よく聞くのじゃ!!日本が、日本がの!」 嫌な予感がツナギには走る。戦争を仕掛けられたのか、核を落とされたのか。ワールドカップの出場を逃してしまったのか、オリンピックで金メダルが1個も取れなかったのか。 そんな風なことが頭の中を過ったのだが、オヤガミ様の少しふっくらとしたナチュラルカラーの唇が開いて出てきた言葉は……。 「日本がパチンコ国になってしまったのじゃ!」 「「……はぁ?」」 ツナギと眼鏡の女性はそう声を揃えた。 何言ってんだ、こいつ。 こんな様子では、先輩のオヤガミ様からまたお叱りを受けてしまうでしょうね。 あと数秒時間があったら、2人の口からそんな言葉が発せられていたことだろう。 しかし、オヤガミ様が放漫でゆるゆるな胸元から取り出したスポーツ新聞を見て、2人の心証はガラリと変わったのである。 受け取った新聞をツナギはバサリと広げ、眼鏡の女性が前髪を押さえながら、肩口から覗き込む。 新憲法誕生!パチンコ・スロット省設立! 全ての賭け事、ギャンブルは合法、統一か。 日本経済復活への最後の一手か。
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