今日も彼はパチンコ屋で働く

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パチンコ屋の接客にも順番がある。 まずすべきは、台のエラーやトラブルで遊戯続行不可能に陥っている客への対応である。 遊戯客の、この場合はスロット台を遊ぶ客のレバーひと叩きが稼働であり、それが店の売上になり、利益に繋がる。 スーパーマーケットやコンビニで商品を持った客の会計を行わないなどという店はまずない。 台がけたたましいエラー音を鳴り響かせ、客が呼び出しボタンを押し、店員の到着を待っている時間。 1円の売上にもならないあってはならないダークタイムだ。 計数を待つ客への声掛けを終えたツナギは、台上部に設置された呼び出しランプが光る遊戯台へと足早に向かう。 そうする途中で、スロット台の下皿にメダルがあるのかないのか。呼び出してきた客はどんな様子なのか。 その辺りを加味しながら、どのカテゴリーのエラーが出ているのかを予測していく必要がある。 台の前にたどり着いてから何のエラーなのか探っているようでは遅いわけである。 「お待たせ致しました。少々お待ちくださいませ」 今回は、セレクターエラーであった。投入したメダルを計測、識別する部分でのトラブル。 ツナギは腰から下げた台鍵をスロット台の右に付いた鍵穴に差し込みドアをオープンする。 メダル投入口の反対側を覗くと、銀色のメダルが2枚重なった状態で引っ掛かっていた。どうやらメダルが滑る縁に溜まった汚れが原因で、メダルの通りが悪くなっているようだった。
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