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2台のトラブル対応をして、頭からメダル計数待ちの客が居るという状況ではあるが、微塵も嫌な表情を浮かべることなく、ツナギはそのメダルを受け取った。
「順番にお待ちしますので、少々お待ち下さいませ」
まるで飲み物デリバリー待ちの先客が居るかのような上手いいい回し。
ようやく来た強めの演出。力を込めてストップボタンを押している。
リール上でスイカを狙う作業服おじさんが小さく頷くのを確認。
そうしてからツナギはようやくジェットの前に戻って来て、待たせていた客のメダル計数に取り掛かった。
いわゆるカチ盛り状態にされているドル箱が3つ。
ただメダルをざっくばらんに箱へ入れるのではなく、底の平らな部分に対して縦にして入れていくのだ。
そうすることで普通に入れた時よりも、メダルが立った状態で積まれていくのでより多くの枚数を収納出来る。
ずっしりと重たいそのドル箱の中身を少しずつ崩しながら丁寧にジェットの中へと流し込ませていく。
半年程前に稼働が開始された人気バトル漫画のスロット台。朝から並び、7時間以上レバーを叩き続けて得た努力と苦労の結晶。
当事者にとっては景品に交換するまでの間においては、我が子のような愛おしさがある積み上げたメダルの山。
それをツナギという青年が一時的に預かり、計数していくわけなのである。
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