彼女はバジルの香り

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 数年後、妻と腕を組んで街を歩いている時に、小さな子供二人に振り回されているパンキッシュなファッションのカップルがいた。その二の腕には蠍のタトゥー。思わず振り返ってみている僕に、妻は不思議そうだ。 「どうしたの? お知り合い?」 「……いや。たぶん違うと思う」  茉莉香。君は君の幸せを掴んだんだな。僕も僕の幸せを掴んだよ。 「ランチはイタリアンにしない? バジルのスパゲティが食べたくなったな」 「あぁ、いいわね!」  僕は妻と微笑みを交わしながら、カジュアルなイタリアンレストランのドアを押した。
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