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「じゃあ、アザミさんは魔女なの?」
「うん」
自分が魔女であると認めることが、この先の運命を大きく変えてしまうかもなんて思いもしなかった。けれど、気づいた時にはもう遅い。
イチハツの元から大きな瞳がさらに大きく見開かれた。勘違いじゃなければ、その瞳は潤んで頬は紅潮している。
恐れられるのだろうか。それとも怪物だなんて言われて、人間をたくさん呼ばれて殺されるかもしれない。今なら冗談だと誤魔化せるかも。
そう思っていると、イチハツは宙を犬かきしながら私の元までやってきた。イチハツが浮かんでいるのはなんて説明しよう。焦って余計に何も言えなくなる。イチハツがもう目の前だ。どうしよう。
イチハツは焦る私なんて気にせず、急に両手を握り締めてきた。
「オレ初めて魔女に会った! アザミさんはすごい人だ!」
「……私のこと怖くないの」
「なんで? アザミさんは命の恩人。怖がる理由がどこにあるのさ」
「だって魔法とか、理解できない現象は怖いでしょ」
「オレはワクワクするけど」
その時、私の記憶の中の面影とイチハツが重なった気がした。親友も初めて私の魔法を見た時にすごいと言って褒め、ワクワクすると言ってくれた。何百年も経って同じことを言われるとは思ってもみなかった。
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