夜は太陽を捨てたから

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アトモス家の1人息子、イグノアは床につきながら将来について考えていた。 明日、18歳の誕生日を迎えると共に神域の監視者としての役割を担い始めなければならない。 そのことについては幼い頃から、誕生日を迎える度に父親から言われてきたことだった。 「お前はアトモス家の伝統である監視者の役目を立派に果たすんだ。」 アトモス家は先祖から受け継がれてきた広大な土地を有している。 初代の監視者がその役目を果たし始める前から周辺に住んでいた人たちは土地を売り、別の場所に移住してしまったため、広大な空き土地ができた。その土地を全てアトモス家が購入したのである。  その広大な土地を畑や畜産に使用している。 そのため、食べるものには困らない。 しかし、アトモス家の人間は神域に侵入する者がいないかを監視する役目がある。 食に困らない安定性と、 この土地から離れられない不自由を イグノアは天秤に何度もかけている。 また、イグノアはアトモス家について、 いくつかの疑問を抱きながら過ごしてきた。 広大な土地を購入することができた資金の出所や、周りの住民が移住してしまった理由などだ。 彼はそれらの謎について何度か父に質問しているが、満足な回答を得られたことはない。 回答はいつも同じで、 「そんなことは気にしなくて良い。お前は監視者の役目を果たすことだけを考えろ。」 と返されるだけだった。 その返答を聞く度に、 イグノアは自分のことを監視者になるためだけの存在だと認識されていると感じていた。 さらに謎だらけの家で継承されてきた監視者という役目に対する不信感もある。 そもそも太陽神とはどのような存在なのか。 せめてその事を明白にしてからでなければ、 監視者という役目に自分の人生を捧げることはできないとイグノアは思っていた。 明日、自分1人で監視を行う夜がやって来る。 確かめないといけない。 そう決心し、イグノアは眠りについた。
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