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宿を出たグノーシは、宿のオーナーから貰った地図を頼りに立て看板がある家に向かった。
そこに向かって進むにつれ民家が少なくなり、
この先に人が住む家があるのか不安に
なり始めた頃、畑が見えてきた。
遠くには牛や鶏を飼育している小屋も見える。
噂の立て看板は見つからないが、グノーシはここがアグニア家の敷地だと推測した。
誰かいないかと周りを見渡したところ、
地面に座り、看板を製作しているイグノアの姿が見えた。
後ろに近づき、グノーシは彼に話しかけた。
「こんにちは!グノーシと申します!」
挨拶をすると、イグノアはその声に反応し彼女の方へと振り返った。
「こんにちは。」
「もしかしてアトモスさんですか?」
「確かに僕の苗字はアトモスですけど...
何の用ですか?こんな辺鄙な所に来るなんて珍しいですね。」
「用事は...」
正直に「太陽神について調査に来ました!」と言うと、警戒されると思ったグノーシは、イグノアが製作している物を指差して、こう言った。
「何を作っているの?」
「立て看板です。これを4つ作って今日中に設置する必要があるんですよ。」
「4つも?!大変だね。ちなみにどのような内容を書くの?」
「それは...」
イグノアが回答に困っていると、
「おい!何をしている!」
髭を蓄えた大柄な男がこちらに向かって歩いてきた。
「こんにちは!」
グノーシはその男にも挨拶をした。
男は彼女のことを一瞥した後、イグノアに向かって話し始めた。
「まだ看板を作っているのか。早く完了させろ!太陽神の御前で行う監視者継承の儀式まであまり時間がないんだぞ!」
イグノアはバツが悪そうな顔をしながら、グノーシの顔をちらりと見た。
彼女は再度、大柄の男に話しかけた。
「あの...監視者とは何ですか?それに太陽神って...」
男はグノーシの方をぐるりと向き、大きな声で話し始めた。
「あぁ!お嬢さんはこの辺りの人間ではないのですね。私たちアトモス家は神域に侵入する不埒な輩を監視する役目を代々担っているのです。」
「神域?」
「そう、神域です。」
「そこに太陽神がいるのですか?」
男はにっこりと笑顔を見せた。
「それはお教えすることができません。私たちが言える事は神域に入ると死ぬということだけです。」
「死ぬんですか?それはどういった要因ですか?病死ですか?それとも事故死?」
「そこまではお伝えできません。私から言えるのは神の秘密を知った侵入者に罰が与えられるということのみです。」
「神が持つ力とは?具体的にどういった力ですか?大地を揺らしたり、火山を噴火させたりするのですか?」
「詳しくはお教えすることができません。」
「どうしてですか?」
グノーシは立て続けに質問を続けた。
「どうしてと言われましても...秘密だからとしか言えませんね。」
「いや、神域に入らないで欲しいことが目的であれば、侵入した場合にどういった原因で死んでしまうのかを具体的に伝えた方が侵入者の抑制に効果的ではないですか?」
「それはそうかもしれませんが...」
「そうかもしれないのであれば、教えて下さいよ。」
「お嬢さん、そろそろお帰りになられてはいかがですかね?私も暇ではないので。」
男はグノーシとの会話で明らかに苛立ちが募っていた。
「神が持つ力について教えていただければ帰りますよ。それともまさか、ご自身が信じている神について全然詳しくないから教えることができない、という訳ではありませんよね?」
男の苛立ちは頂点に達した。
「そこまで仰るなら教えてあげますよ!
古代技術です!今は失われし古代技術によって侵入者に罰が与えられます!
これで満足ですか?早く帰って下さい!
イグノアも早く看板を作り上げて家に戻れ!」
男はそう言い放ち、家へと戻って行った。
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