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その夜...
イグノアが新しく立てた看板を、
彼とグノーシが見つめていた。
「自分で侵入禁止の看板を作っておいて、その先に侵入するなんて気が引けますけど、ここまで来たらやるしかないですね。」
「そうだね。お父様は大丈夫?もう寝た?」
「寝てますね。父と母と僕の交代制で監視役の当番を回しているのですが、今日の昼は父が当番だったのでもう寝てます。」
「それなら大丈夫だね!早速行こう。」
「はい!」
「立て看板の先に進んでいけばいいの?」
「立て看板は4つ存在して、全て外側を向いています。つまり四方から侵入者を防ごうとしているんですよ。ということは、その4つの看板を線で結んだ中心に何かがあると思うんですよね。」
「おぉ!流石詳しいね。」
「今日の昼に自分が設置したので、流石に覚えてます!中心に目印を付けておいたので、そこに向かいましょう!」
2人はその目印に向けて歩き始めた。
10分ほど歩くと、イグノアが目印をつけた地点にたどり着いた。
「ここに何かがあるってこと?」
地面につけられた×印を見ながら、
グノーシは尋ねた。
「恐らく...地上には何もないのでとりあえず地面を掘ってみましょう。」
イグノアはグノーシに鍬を手渡した。
「遺跡の発掘みたいだね!」
「こんな感じなんですか?」
「鍬ではやったことないけどね。」
2人は一心不乱に掘り進めた。
すると、土ではない層にぶつかった。
カン!と金属に当たった音が響いた。
「何かにぶつかりましたね。」
「うん。でも鍬で壊せない程の強度ではないな。」
土の中からは黒い層が見えていた。
土とは明らかに異なるその色合いに心を躍らせながら、2人はその層を破壊した。
破壊した箇所から中を覗き込むと、真っ暗な世界が広がっていた。
「何か落としてみようか。」
グノーシはそう言うと、その辺に落ちていた石を拾い、穴の中に落とした。
中でコーンという音が響いた。
「内部は空洞だね。人は余裕で通れそうな広さがありそうだ。」
「縄を持ってきているので、1人ずつ降りますか?あとオイルランプもあるので暗くても大丈夫です。」
「準備が良いね!そうしよう。」
2人は順番に穴の中に降りた。
「ここ、緩やかに傾斜があるね。坂を下って行こう。その先に何かあるはずだ。」
「そうですね。行ってみましょう。」
深淵に不安を抱いてはいたが、謎の解明に近づいているという興奮が2人の歩みを進めた。
「神様ってどういう存在なんでしょうね?」
「私は考古学が専門なので、宗教学者に比べると詳しくはないが、神は心の拠り所なんだと思うよ。」
「生活に必要な存在ってことですか?」
「そういうことだよ。」
「目に見えたりするんですかね?」
「そうであることを願うけどね。見えなかったら確認できないしさ。」
「そうですよね...あっ!見てくださいグノーシさん!何ですかこれ?」
イグノアは、オイルランプで壁を照らした。
そこには、黒い円とその右上、左上、真下の3箇所に斧の刃に似た黒いものが円に対して刃を外側に向けて配置されているようなマークがあった。
「グノーシさん!こっちにもあります!これは何のマークですか?」
グノーシは少し考えてから答えた。
「文献を当たっている時に何度か目にしたことがあるマークなんだよね。一部の単語しか解読しできていないから、何のマークかは分からないけど。」
「そうなんですか...」
「でも、この場所が何の古代技術に関係しているかは分かったよ!」
「え!本当ですか!」
イグノアは目を輝かせながらそう言った。
「ここは古代技術の一つ、『電気』に関係している施設だ!」
「電気...それはどういった技術なんですか。」
「簡単に言うと、夜でも昼みたいに明るくすることができる技術だね。」
「そんなことができたんですか?太陽が夜も昇っているみたいなことですよね?」
「昔はできたんだよ。ん?待って!イグノアくん、今何て言った?」
「え?太陽が..」
「それだ!太陽だよ。アトモス家が神と崇めている太陽を古代技術では再現できてしまっていたんだよ!自分の信じている神を人工的に再現されたらどう思う?」
「物凄く反発すると思います。」
「神域には神の秘密があるとお父様は仰っていたよね?古代技術である電気で太陽が再現できる、つまり神が再現できるということが秘密なんじゃないのかな?」
「それが神の秘密か...」
「あまり知りたくなかったことかもしれないね。」
「いえ、知ることができて良かったです。
今は神についてよりも、太陽を再現できる電気という古代技術が気になります。それをこの目で確かめたいです。」
「同感だよ!この奥にあるはずだよ!」
2人は歩みを再開し、最奥へと進み始めた。
1時間半ほど歩くと開けた空間に出た。
「グノーシさん!ここに電気の秘密が眠っているんじゃないですか!」
「その可能性はあるね... ん?あれは何だ!?」
そこにはイグノアの背丈ほどもある箱が置かれていた。
その箱にも先ほど見た謎のマークが刻まれていた。
「絶対これが古代技術に迫る秘宝ですよ!」
「その可能性は極めて高いね!」
「グノーシさん!横に壊しやすそうなところがありますよ!鍬で壊してみましょう!」
「分かった!2人同時に叩こう、せーの!」
箱は経年劣化と2人から加えられた力に耐え切れず崩壊した。
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