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 生まれた時から私の側にいる幼馴染の永野は、感情表現が乏しいながらも、思春期を迎えた頃から異性の気を引こうと頑張っていた。  しかし、中学生になって流行りの髪型にしても、制服のスカートを短くしても、学校№1のモテる女子の真似をしても、みんなから好奇な目で見られることはあっても、異性から好意の目を向けられることは無かった。  自分なりの努力が報られなかった中学時代を終えた永野は、高校生入学を機に路線変更をしてギャルになったのだが、入学初日に先生に呼び出され説教と言うよりも哀れみを込めて言われたそうだ。  「君と入れ替わるように卒業した従妹が、地味な生徒まで感化されてギャルに変身させてしまうような、カリスマ的なギャルだったことは、学校中の誰もが知っている。でも、従妹だからと言って君までギャルにならなくてもいいんだよ」  そう、永野の従妹のお姉ちゃんは本当に友達100人いそうな、オープンマインドの陽気なギャルで、永野とは光と影・表と裏・天と地ほどのキャラの違いがあり、永野の本当の姿を知らない先生でもあっさり見抜けるくらい、永野にギャルは似合わなかった。  人に言われて、「ですよねぇ~」とあっさり止めるなら、中学の時に「その髪型、昭和のアイドル?」と言われた時に止めてるし。「成長期でスカートが短くなったの?」と言われたのが嫌味だと気づいているし。「モテる女子のモノマネは、似て無いよ」と好意を寄せていた男子にハッキリ言われた時に恥ずかしくなるものだろう。しかし、永野はそのままの意味と捉え、何なら、自分に都合のいいように解釈して、勝手な妄想を膨らますだけ。その結果、永野のギャルは、1年生の冬まで続けられた。  しかし、冬休みが明けた3学期の登校初日から、また急な路線変更を行った。  「ねぇ、永野。何でギャル止めたの」  学校が終わって真っすぐ家に帰ると必然的に一緒になる帰り道で、我慢できずに聞いてしまった。  「私、モテる女より。持ってる女になる事にした」  「持ってる女?」  「そう。持ってる女は、モテる女より、人を惹きつけるらしい」  表情はほとんど変わらないが、長年の付き合いで、少しとがった口の形で得意気になっているのが分かったが、珍しくそれが鼻につかなかったので、詳しく経緯を聞くことにした。    
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