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新しい雑誌の連載が決まって、毎月5日が締め切り。
定期収入は有り難い。そうなると迅の家賃がなくても生きてゆける。でも迅がいないと寂しい。
迅は相変わらずバッグを作って売っている。注文を受けて作ったり、作ったものが売れたりまちまちのようだ。ホルンのバッグを頼んだ人はわざわざ受け取りに来ていた。
「小波ちゃんがいないから、猟が始まったら自分でいろいろしないと。実は見ていただけで、肉を削ぎ落したりできる気がしない」
と迅が小波ちゃんが乾かしたなめし革に線を描いてカットする。大きさや手間のかかり方によって商品は数万から数十万円。迅も細かい作業と農作業を交互にする。ひとつのことに没頭するのも悪くないが、どちら作業も肩がこる。体のためにも適度な休憩は必要だ。
枯れかけた庭のオシロイバナを片づけた。
「種はなるべく捨てたいんだよ」
去年も片づけたはずなのに、今年は生息域を拡大したように感じる。
「この黒いの?」
迅がまだ枝から落ちない種をつまむ。
「勢いがすごいから、これ以上自生されたら畑のほうまで行っちゃいそうで」
「夏に少し周りの茎を落としたのにね」
「昔の子みたいにおしろいで遊ばないからか」
俺の姉さんだってそんなことしなかった。
「種を売ったら?」
「種苗法っていうのがあるんだよ」
花とか野菜は種類によって決まっている。
「へえ。由太郎さんは小説家だから詳しいね」
著作権とも近いかもしれない。
取れるだけの種は取って、あとは茎ごときって乾かす。畑ではなく、庭の隅に穴を掘って埋めた。
「ヤギにあげたら?」
迅が聞く。
「弱いけど毒があるんだ。茎だっけな? 根かな」
「え?」
持っていた茎を落とす。
「ちょっとお腹が痛くなるだけだ」
「でも、毒なんでしょ?」
「毒だって、薬みたいな作用するものもあると思うよ」
「そっか」
それは理解してくれるよう。自然のものは意外と多い。蕗もそうだし、ジャガイモの芽とかは有名だろうけど、生姜だって数百食ったら致死量。丸々そんな量を食べる人なんていないだろうけど。
そんなことを考えながら今日は生姜焼き。
「秋だね」
迅が庭を眺める。
「うん」
うちと後藤さんの家の境に栗の木がある。毎年、後藤さんから頂いていたが、今年は落ちてうちの敷地に入ったものはもらっていいのだろうか。わからないよ、後藤さん。
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