○月○日 信用ならない

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とりあえずより早く終わらせたくなり、これまでの経緯を要点だけ丁寧に伝える。 一通り聞かれたが、大した感想もなく話は寝床についてへと切り替わる。 「それにしても凄いですねー。これはご自身で。」 「はいそうです。独学ですがなんとか作れました。」 「これなんですか?」 インタビュアーは手製のキャビネットに手を向け、自然と扉を開けた。 「キャビネットです。建て付けもあるのであんまり・・・」 無意識にやった彼の行動に若干の苛立ちを見せたマサオだった。 「あ、すいません!つい・・・」 インタビュアーは不慣れな手つきで手直しを始めた。 時間にして20分が経過したのか。 作業の途中でやってきた彼らに対してだんだんと鬱陶しくなり、マサオは作業続行を申し立てた。 その様子を撮影しているカメラマン。 「なんだか、新しいアクティビティみたいですね。路上キャンプみたいな・・・」 「ハハハ・・・そんなつもりないんですけどね。」 マサオは、カメラマンから無意識に出た言葉に疑問を覚えた。 そしてインタビュアーから最後に『路上生活とは?』という質問に対して一言欲しいと言われたので答えた。 「再生の一歩?ですかね。」 これで終わると思ってた矢先だ。 「すいません。最後のやつ、貰った言葉じゃなくて『キャンプ』って言ってもらえませんかね?」 「え?・・・はい。」 カメラマンが発した言葉が気に入ったのか、マサオに無理やり答えさせる。 こうして下手くそで当たり障りないインタビューを終えた二人は寝床を後にした。 予想以上に時間をムダに使ってしまったと思い、作業もそこそこにマサオは寝る事にした。 正直言えば深夜3時過ぎに尋ねられてもだ。 周りには他の人だって寝ているのだからその辺を考慮してほしいものだ。 何よりマサオは自分の本心を語ったつもりだったのに、作り手側に変に操作された事を憤りを覚えた。 インタビューを受けた事を後悔し、瞼を閉じた。
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