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○月○日 意思疎通とは?
早朝の寒さで一度眼が覚め、小一時間ほど寝れない時間が続く。
眠れても外の雑音ですぐに起きてしまう。
毎朝これが続くとなると、ゆっくり寝れるか正直不安しかない。
ただこの日は土曜日。
休日は周りも静かなため、いつもの様に外も慌ただしくないためか、二度寝してもゆっくり寝れる。
ここがオフィス街のど真ん中である事にマサオは感謝した。
昼頃再び眼が覚めるとある場所へ向かう。
食料配布の会場だ。
毎週土曜日、寝床近くのビル前広場にて食料が配られるのだ。
毎週のように中身が変わるような事もないが、貰えるだけありがたい事だ。
貰えたものが手元に増えれば増えるほど、昨日考えた献立表の想定料金を使わなくて済むというもの。
この日も大挙してきた人数の中に身を投じる。
列の場所取りをして、再び寝床へ戻る。
不思議なことに、割り込みされるという事がないのだ。
まだここに集う人たちにはその辺のモラルがある。
マサオは側から見たら逸脱していたとして、まだ人間社会に身を投じているのだと確信したのだった。
寝床にて時間潰しをしているが、完全にテレビが手放せなくなっていた。
情報を集めるためのツールが今や彼の娯楽のための必要アイテムと化していた。
イヤホンをつけることで、外界からの干渉の殆どがシャットダウンされるのだから自分の時間が邪魔されなくて済む。
テレビを買えるだけの資金を援助してくれたあの迷惑外人、スティーブンに少しだけ感謝した。
時間が来たので再び列に戻るべく寝床を離れる。
周りの人間も殆ど居なくなるため、完全に人気のない静かな通りになる。
マサオの寝床の壁には、一向に無くならない彼に向けた手紙がポツリとだけ存在していた。
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