○月○日 回想

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○月○日 回想

日中天気に恵まれ、暖かい日差しが街を包む中、マサオは今大荷物を背負いある場所へ向かっている。 昨日行動に起こそうとした古着屋巡りだ。 10キロ前後は入るであろう旅行用リュックサックにパンパンに詰められた洋服を生活費に変えるべく行動に出た。 買い取ってくれそうな場所を徒歩で約一時間ほどの所に見つけたので行ってみることにした。 歩くたびにいつもと違う景色が目に入ることにどことなくワクワクしていた。 ビル街からビル街への道のりが、久々の長旅に感じる。 "こんなオフィス街を毎日のように通っていたな。" 職場やかつての仲間達を絶ってからひと月ほどが経過した今だからこそ、つい先日の事を懐かしく思う。 あの時こうしていれば変わったのか・・・ もっと言われた通りに動けていたら円滑にできたのか・・・ でもその前にまた自分が潰れていたら・・・ 離れるにしても、もっと別のやり方があったのではないだろうか・・・ 道中、過去の『タラレバ』が次々と出てくる。 今まで真剣に向き合ってこなかった証拠なのだろうか? または一種の後悔なのだろうか? 一つ言えるのは、何事ももっと上手くやれていたら違っていた事には変わりないと思う。 重ねて、日々サンドバッグの如く扱われていた自分が情けなく思えたのだった。 事実、一時期だけでも『正社員』という肩書きが持てた事はありがたい事だった。 反面、立派なビルの中で働く機会は余程のことがない限りはもう難しいだろう。 彼は、もう過去の事だと割り切ろうとしていた。 恐らくこれは少しずつだが精神が落ち着き、整理ができるようになった証拠なのだろう。
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