人が人であるための権利を奪われた世界で

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戦闘機の発進命令を受けて、空母の飛行甲板では、戦闘機を空へと送り出すために、兵士達が慌ただしく動き始めた。 その兵士達をかき分けるように姿を見せたのは、ロシア連邦が誇る最新鋭ステルス戦闘機、SU-57。 だがこの戦闘機は、元々空軍向けに開発された戦闘機であるため、本来SU-57には空母への離着陸能力は付与されていない。 しかし、一部のエースパイロットが操る特別仕様のSU-57戦闘機には、実証実験も兼ねて、空母への離着陸能力が付与されたモデルが存在している。 またこの戦闘機は、ロシア連邦が誇る最新鋭戦闘機という事もあり、現在空母への離着陸能力を得て運用されているモデルは、ウラジミール・ベアード少佐が率いる、ベア隊が装備する個体のみに留まっている。 そのベア隊は、所属する全てのパイロットがエースクラスのパイロットのみで構成されており、中でもこの隊をまとめ上げるベアード少佐は、北極圏の死神と言うニックネームで、世界中のパイロット達からその名を知られ、恐れられている。 だが実際の彼は、一言で言うと気の良い兄ちゃんと言った感じの性格で、部隊に所属する仲間や、共に働く整備士などからも、ベア少佐とあだ名をつけられて親しまれている。 そんなベア少佐の戦闘機が、慌ただしく走り回る兵士達を、ジェットエンジンの轟音でかき分けると、ベアード少佐は単身大空へと舞い上がっていった。 空母から飛び立ったベア少佐は、やがて発進地点からほど近い場所に、滝の流れる水源を発見し、その情報を元に、ロシア海軍北方艦隊司令部は、速やかにその地域の陸上偵察任務を立案すると、その場所を発見したベアードに、自身の隊を率いて、その地域一体の偵察任務を命ずる事となった。
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