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「少佐。俺達は空軍籍ですよ? 我々空軍兵がこうして海軍に同行しているのは、我々の戦闘機が無事に空母に離発着出来るかどうかのテストを行うためなのに、なんで俺達が海軍に指示されて動かなきゃならんのです?」
ベア隊の隊員の一人が、自分達は空軍兵である事を盾にして、偵察任務は海軍がやれば良いと愚痴を漏らしている。
そう。実はベア隊は、空母にこそ搭乗してはいるものの、海軍と共同で空軍機の空母への離着陸訓練をするために、この空母に搭乗しているのに過ぎなかった。
だが、今ベア達が居る世界は、元々自分達が居た世界で無い事は明白である。
確かに自分達の立場を考えれば、愚痴りたくなる部下の気持ちは分からないでもないが、今は海軍と余計な対立をするよりも、お互いに手を取り合って協力するのが最も良い選択だと言えるだろう。
ベアがその旨を部下に説明しながら、自分達を目的地まで送るヘリコプターに乗り込むと、ヘリはすぐに空母から発艦した。
その後一時間程ヘリに揺られていると、ベア隊は先程見つけた滝のほとりにたどり着いた。
ベア達はファストロープを使って、素早くヘリから地上へと降り立つと、早速周辺地域の調査に取り掛かる。
まず滝の水の水質調査のために、滝壺に溜まった水を組み上げてサンプルをとり、そのサンプルをヘリに引き渡すと、ヘリはすぐに水のサンプルを基地へと持ち帰った。
ヘリが去った後に残されたベア隊は、続いて土壌のサンプルを複数箇所から集め、それが終わると近隣調査の為に、滝壺から森の中へと足を踏み入れた。
完全武装したロシア連邦特殊部隊員達が、木々が生い茂る森の中を、音も立てずに前進して行く。
そうやって20分程森の中を探索すると、なにやらログハウスのような外観の一軒家を見つけることが出来た。
「隊長、どうしますか?」
目の前のログハウスをじっと睨みつけながら、部下の一人がベアに指示を仰ぐ。
ベアはその場で少しばかり考えると、下手に武力で制圧するのではなく、まずはこの世界の住人との対話を目指そうと仲間達に提案をした。
そして、彼等は目の前にある一軒家へと歩を進めると、その建物の入り口らしき扉を軽く叩いて様子を見る。
するとログハウスの中から出てきたのは、我々人間と同じ容姿をした、若い女であった。
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