長い夜

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長い夜

寮部屋のベッドの軋む音と 肉のぶつかる音、そして―――… 動くたび結合部から、何度も中に放たれた精液で、グチュ、グチュ、という水音と喘ぎ声が部屋に響く。 「…ッ、ふっ、あっあっ、ぅあっんっ…」 将暉に翻弄されて、だた喘ぐしかできない。 「…悠生、エロすぎ…っ」 「あっ!……はぁ…っ、ん、」 吐息のように耳元で囁かれる言葉で、将暉を呑み込んでる部分がキュッと締まる。 何度も将暉に突かれ慣れた、この体。 奥を突かれ喘ぎ、将暉の背中に回した両手に力が入る。 舌と舌を絡め、口の端から唾液がつぅーっと流れ落ちる。 「ひゃっ、あっ、…あっあ、ぅあ、やっ」 「はっ、あっ…ッ…ぁ」 激しい腰の動きに、僕は思わず高い喘ぎを漏らす。 将暉の荒い息遣いも聞こえて、さらに感じてしまう。 「ああ……っ!…イクッ」 「―――っ、伊織」 凄まじいほど程の絶頂の中、また訪れた絶望の言葉。 心が引き裂かれそうになる言葉。 胸が痛いくらい突き刺すその名前。 その名前は 僕の名前じゃない―――…。 身代わりだとわかっている。 だって 自分から言い出した事だから。 あの日の夜に―――――… 『なあ、悠生、…男としたことあるか?』 『…え?今、何て言った?』 僕は将暉の言葉に思わず聞き返してしまった。 『ちょっと気になる奴がいるんだ。男なんだけど。そういう、まぁ、…恋愛?って意味で…さ。 もし付き合う事になったら…と思うと、男とセックスなんて初めてだから、迂闊に手を出せないんだ。…悪い、こんな話。ただ聞いただけだから忘れてくれ』 心臓が痛い 痛くて 痛くて苦しいよ ずっと将暉の1番になりたかったのに―――――… この全寮制男子高校は、同性同士の恋愛は日常的だった。 だけど、将暉が染まるなんて思いもしなかった。 3年間、好きを隠して一緒にいる事を選んだ僕に残酷な言葉だった。そんなことを知らない将暉は、顔を赤くしてる。 …その人の事を思い出しているのだろうか…。 僕を見て欲しかった。 僕に対してそうして欲しかった。 男同士は初めてなら、 体だけでもいいから将暉が欲しかった。 『じゃあ、ぼくが練習台になってあげようか?男同士って興味合ったし』 ニッコリ笑って、軽い調子で言って、そのまま押し倒し唇を重ねた。 将暉は僕にされるがまま、抵抗しなかった。 心は手に入らないなら、せめて体だけでも欲しい。 僕の初めてを誰でもない将暉に捧げるから――――…。
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