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ボク、ラクト。中二の、スカートはくの好きだけど男子。たぶん。
それで親とモメて、今年の夏から北海道のおじさんちにお世話になってる。
そして今、雪が降る中、スーパーの前で、おじさんの大事な大事な親友・一弘さんから「結婚する」って聞いたとこ。
おじさんは動かなくなった。
ずっと固まってるから、ボクも一弘さんも心配になった。
「おじさん?」
「おい、陣内?」
ボクが腕を掴んで揺らすと「……おう」と、いつものようにダルそうに返事した。でも、腕はチカラ入ってたし、ボクが揺すってもポケットに入れた手は出てもこなかった。
「…お前は、いっつもビックリさせてくれるなぁ」
「そうかー? ま、詳しいことは帰ってから話すけど、一番最初にお前に言っておきたかったんだ」
一弘さん、めちゃくちゃイイ顔…おじさんが大好きな顔…で、ニッコリした。
おじさんが、ちょっとだけ釣られて笑った。無理して笑ったのかもしれないけど。
「そうか、決めたんだな……そうか……おめでとう」
「ありがとう!」
一弘さんは、後ろにいた眼鏡の女の人を紹介した。一弘さんの職場のパートさんなんだって。すごい無表情だけど、ホントに接客業の人なの?
「人の多いところじゃ、まだうまく話せないんだ。でも、ミッチイに会ったことあるから、お前は知ってるよな?」
「ああ」
人の多いとこじゃ話せないのに、どうやって仕事してるんだろう…?
女の人は、ものすごく深く、綺麗な姿勢でお辞儀をした。
一弘さんとミッチイさんは、これから宮城まで行って、一夜限りのサンタとトナカイになってくるんだって。えっ結婚前に二人きりで旅行いくの⁈
おじさんは、いつも通りに見えた。
「帰ったら詳しいこと聞かせてくれ」
「おう!」
「気をつけてな。青瀬によろしく」
「おう! お前もゆっくり休めよ、二学期お疲れ! ラクトもな!」
「う、うん、ありがと! 気をつけてね!」
おじさんはポケットに手を入れたまま、一弘さんの車が走って行った先を、しばらく見ていた。
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