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しかし、トムがそれを後悔するのに時間はかからなかった。二階に着くなり叫び声が聞こえた。それも尋常ではない。
聞き取れない言葉で何かを叫んでいる。ハイは困り果てている。二人は部屋に入った。
部屋は綺麗とは言い難く、主のだらしなさを物語っていた。洗面台には化粧品が転がり、服は散乱していた。ジョージは幻滅に近い感情を覚えた。市役所の窓口対応を通じて女への幻想は大分補正されたはずだが、それでも唖然となる汚さだ。野生動物の穴蔵ももう少し綺麗だろう。
更に目を引くのはゴミ箱の中だった。夥しい量の薬の袋が突っ込まれていた。見ると、向精神薬や睡眠薬が主で、低用量ピルが混ざっていた。どうやら薬を飲んでから寝たらしい。
「む、二人共来たのか」
「すみません、叫び声が聞こえたから」
トムは咄嗟の言い訳をした。ハイは冷静を努めていたが、呆れが顔に出ていた。
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