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ボサボサのセミロングの髪を振り乱したキャミソールにショートパンツ姿の女が叫んでいる。右肩にはサンダーと同じ痣があった。女はすっぴんで、少し顔がむくんでいたが割とはっきりした顔立ちだ。
「ぬいぐるみがなくなったらしいんだ。探すのに協力してほしい。耳が黒い白い犬だ」
散らかった部屋にはやたらその特徴を備えた犬のプリントがなされた物が散らかっていた。子どもの部屋なら可愛らしいが、暴れている成人女性の部屋だと思うと空恐ろしく感じる。
様々なものをひっくり返すと、赤い何かが手に絡みついた。見ると、女性もののブラジャーだった。カップは大きく、タグには「32DD」と書いてある。女をちらりと見ると納得できるサイズだった。
少しドキドキしつつ、ため息を付く。自分だって下着は人目につかないようにする。
トムは至って冷静だ。ジョージがいなければ同じ事になっているからか、女の部屋を見ても何も思わないようだ。対になっているだろうショーツを見てもぽい、と放つ。
「これかな」
トムが女に三十センチくらいの犬の人形を渡す。至近距離で見ると大分古い人形だ。
「あった!ありがとう!」
ぬいぐるみを潰すように抱きしめながら頭を下げられる。ぬいぐるみから「ぐえ」と声が聞こえそうだ。
「取り乱してごめんね」
ぶっきらぼうだが謝りたい気持ちはあるようだ。
「まあ、大事なものなんだろ。次からは場所を決めておけ」
トムが言った。
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