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ただ、あなたがいなくなって以来、私の成績は格段に伸びた。成績が上がれば、帰ってくるかもしれない。一縷の望みを、そこに賭けたのだ。
私は誰よりも勉強した、という自負がある。おかげで私は、最も日本で難易度の高い大学の門を叩くことができた。しかし、あなたは帰って来なかった。私の成績がどんなに他人から賞賛されようが、私の感情は乾いたままである。
———そんな感情に、一石を投じる出来事が起きた。
ある日私は、あなたと過ごした時間に触れたくて、あなたの郷里へと足を運んだ。訪問の約束も取り付けなかったが、あなたの母が私を出迎えてくれたのである。私はしばらく、あなたの母のもとで逗留することに決めた。
あまりにも、しばらくぶりだからだろうか。あなたの母は、風貌もずいぶん変化を遂げていた。涙袋も顎の下の肉も垂れ、背中も丸くなっている。もちろん、大して話も弾まない。あなたの母は娘が行方不明だというのに、多くを語ろうとしなかった。
あなたの父は、はるか昔に亡くなったと聞いている。そしてあなたの母には、妹が一人いるということも風の頼りで聞いていた。今も元気らしいが、姉妹は絶縁だということも。
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