Act8.アイドルと愛読書について語らいます

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 あたしのもっとも好きな作家の一人だ。興奮して語るも、純は頭の後ろで腕を組み、ふーんとそっぽを向いている。琴宮先生の本は読んだことないのかな。そんなのもったいない! 「でも、作家の正体なんてそんなのどうでもよくなるくらいおもしろいの。かわいい双子ちゃんが学校で起きた事件を解決するミステリーとか。不良少年と優等生がラブラブになっちゃう恋愛ものとか!」  おすすめしたい本ならいっぱいある。  あたしは出版社のサイトでチェック済みの新刊情報をまくしたてる。 「この本も、今月に出た新刊で、すごくおもしろそうなの。中学生の女の子が気になってる男子と、二歳くらいの小さな男の子を育てることになっちゃう話らしいんだけどね」  手に取ってるその本の表紙には、中学生カップルのあいだに手をつながれたぷくぷくほっぺのちっちゃな男の子が涙を浮かべてる。 「この子! ちっちゃなシュンくんが、泣き虫でおまぬけで、もう萌えキュンなんだって!」  純を見ると、あれ。なぜか青い顔をしている。あんまり興味なかったかな……。 「買うのか、それ」 「もちろん!」  レジに行こうと歩きだしたときだった。 「あのさ。花乃。その本はちょっと――」
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